コロナ禍を経て普及したリモートワークは、若者の働き方に自由をもたらした一方で、ゴミ屋敷化という深刻な副作用をもたらしました。以前であれば、「会社に行くために身なりを整える」「毎日決まった時間に外に出る」という外部的な強制力が、最低限の生活リズムを維持するペースメーカーとなっていました。しかし、一歩も外に出ずに仕事が完結してしまう環境は、私生活と仕事の境界線を消失させ、生活空間の崩壊を招く要因となったのです。なぜリモートワークが若者をゴミ屋敷へと誘うのでしょうか。まず、部屋が常に仕事場となることで、オンとオフの切り替えが困難になり、休憩時間も自室の散らかりを見ながら過ごすという、精神的に休まらない状況が生まれます。視覚的なノイズであるゴミに囲まれながら仕事をすることは、集中力を低下させ、仕事の効率を落とし、その焦燥感がさらにセルフネグレクトを悪化させるという負の連鎖を生みます。また、出勤という「他者の視線」に晒される機会が激減したことで、「誰にも見られないからいいや」という心理が働き、掃除や洗濯といった基本的な家事を後回しにするようになります。食事もデリバリーやコンビニ弁当に依存し、そのゴミが机の周りに積み上がっていく。ビデオ会議の際、カメラに映る一角だけを綺麗にし、その外側がどれほど荒れ果てていようとも気にしなくなる「バーチャルクリーン」の状態が続くと、本人の感覚も麻痺していきます。リモートワークによって孤立し、他人の介入がなくなった部屋は、まさにゴミ屋敷にとっての温床です。この状況から脱却するためには、あえて「外に出る理由」を自ら作り出すことが重要です。朝の散歩を日課にする、コワーキングスペースを利用する、定期的に友人を招く。外部の視線という「鏡」を意識的に生活に取り入れることが、ゴミ屋敷化を防ぐ最大の防波堤となります。リモートワークは自由な働き方ですが、それは高度な自己管理能力を必要とするものです。若者たちがデジタルの海に溺れ、現実の足元をゴミの山に奪われないためには、テクノロジーの進化に合わせた「新しい生活の規律」を再構築する必要があるのです。
若者のゴミ屋敷問題と「リモートワーク」の意外な落とし穴