ゴミ屋敷を解消し、ネズミ駆除を成功させるための最大の難関は、物理的な作業そのものではなく、物を溜め込んでしまう住人の心理、いわゆる「ホーディング(溜め込み症)」への理解と対応にあります。多くのゴミ屋敷住人にとって、積み上がった不用品は単なるゴミではなく、孤独や不安から自分を守るための「心の防壁」です。そのため、外部の人間がネズミ駆除のために「ゴミを捨てよう」と提案することは、彼らにとって自分の存在価値や安全を脅かされる、耐えがたい攻撃として受け取られてしまうことが少なくありません。ネズミが走り回る不衛生な環境を目の当たりにしても、彼らが「まだ大丈夫だ」「ネズミは私の友達だ」と異常な主張をすることがありますが、これは認知の歪みによって自分の置かれた窮状を認められなくなっている証拠です。家族や周囲が「汚いから捨てなさい!」と怒鳴りつけたり、無理やり物を持ち去ったりすることは、問題を悪化させるだけで、根本的な解決には繋がりません。ネズミ駆除を円滑に進めるためには、まず本人の心に寄り添い、信頼関係を築くことから始める必要があります。ネズミという言葉を出す前に、「あなたの健康が心配だ」「火災であなたが死んでしまうのが怖い」と、本人の安全を願う家族の切実な思いを伝えましょう。片付けを拒む理由の裏に隠された寂しさや不安を丁寧に聞き取り、「ネズミという外敵から、あなたの大切な思い出を守るために整理が必要なのだ」というポジティブな理由付けを行うことが、本人の決断を促すきっかけになります。また、実際のネズミ駆除や清掃に際しては、本人が納得した範囲から少しずつ進め、小さな成功体験を積み重ねることが大切です。一度にすべてを解決しようとせず、プロのカウンセラーや福祉担当者の助けを借りながら、物理的なゴミと心の中の詰まりを同時に取り除いていく。ネズミが去った後の清潔な部屋で、本人が「ここで安心して眠れる」と実感できたとき、初めてゴミ屋敷からの真の脱却が達成されます。ネズミ駆除は、単なる害獣退治ではありません。それは、孤独な迷宮に閉じ込められた大切な家族を、再び温かな人間の世界へと引き戻すための、愛に満ちた伴走のプロセスなのです。
ネズミ駆除を阻むホーディングの心理と家族の寄り添い