私の兄は、物心ついたときから何をするにも億劫がる性格でした。実家で暮らしていた頃は母がすべて身の回りの世話を焼いていましたが、就職を機に一人暮らしを始めた兄の部屋が、数年後にゴミ屋敷になっているとは誰も想像していませんでした。ある日、連絡が取れなくなった兄のマンションを訪ねると、玄関先までゴミが溢れ出し、兄はそのゴミの山の上に座ってテレビを見ていました。あまりの惨状に私は言葉を失いましたが、兄は平然と「片付けるのがめんどくさかっただけだ」と言い放ちました。そこから私たちの長い戦いが始まりました。最初は怒りに任せて兄を責め、無理やりゴミを袋に詰め込みましたが、兄は協力的になるどころか、自分の聖域を荒らされたと怒り、さらに心を閉ざしてしまいました。そこで私たちは戦略を変えました。兄のめんどくさがりな性格を逆手に取り、「いかに楽をして部屋を維持するか」を兄と一緒に考えることにしたのです。まず、大量のゴミはプロの業者に依頼して一度にリセットしました。その後、兄の部屋には蓋のない大きなゴミ箱を各所に配置し、ゴミ出しの曜日が一目で分かるカレンダーを玄関に貼りました。さらに、週に一度は私が掃除を手伝いに行くことを約束し、兄が一人で抱え込まないようにしました。兄がゴミを溜めてしまったのは、単なるめんどくさがりだけではなく、仕事のプレッシャーや孤独感から、生活を維持するエネルギーを失っていたからだと後で分かりました。家族が介入することで、兄は少しずつ自分自身を取り戻していきました。現在は以前のようなゴミ屋敷には戻っていませんが、それでも時折、部屋が散らかり始めることがあります。しかし、私たちはもう兄を責めません。めんどくさがりな兄がSOSを出しているサインだと捉え、早めに手を差し伸べるようにしています。ゴミ屋敷という問題は、物理的なゴミを片付けるだけでなく、その人の心の欠落を家族の絆で埋めていく作業なのだと痛感した出来事でした。