近年の日本における夏は、かつてのそれとは比較にならないほどの猛烈な暑さが続いており、最高気温が四十度に迫ることも珍しくありません。このような極限の気象条件下において、ゴミ屋敷と化した住居で暮らすことは、文字通り命に関わる重大なリスクを伴います。なぜ、暑い時期のゴミ屋敷がこれほどまでに危険なのか、その第一の理由は、室内における熱の蓄積と停滞にあります。床が見えないほど積み上げられた大量の廃棄物は、断熱材のような役割を果たしてしまい、日中に熱せられた室内の空気を逃がさず、夜間になっても温度が下がらない「蓄熱状態」を作り出します。また、ゴミの山が窓を塞いでいたり、開閉が困難になっていたりする場合、風の通り道が完全に遮断され、室内の湿度は異常なまでに上昇します。人間が効率的に体温を下げるためには、汗が蒸発する際の気化熱が必要ですが、湿度が高く空気の動きがないゴミ屋敷の中では、この機能が著しく低下し、体内に熱がこもってしまうのです。さらに、ゴミ屋敷の住人の多くは高齢者であることが多く、加齢によって喉の渇きを感じにくくなっていたり、体温調節機能が衰えていたりするため、知らず知らずのうちに重度の脱水症状に陥る危険性が極めて高いのです。ゴミの山をかき分けて移動するだけでも多大な体力を消耗し、その際の基礎代謝による発熱がさらに体温を上昇させます。また、不衛生な環境においては、皮膚の炎症や感染症が起きやすく、これらが発熱を引き起こすことで、熱中症のリスクをさらに増幅させます。冷房を使えば良いという意見もありますが、ゴミ屋敷ではエアコンの吸気口がゴミで塞がれていたり、室外機の周囲に物が置かれて排熱が上手くいかなかったり、あるいは長年のホコリで故障していたりと、適切に冷房が機能しないケースが多々あります。最悪の場合、室内の温度が四十度を超え、サウナのような状態の中で意識を失い、誰にも気づかれずに命を落とすという孤独死の悲劇を招くことになります。暑い季節が来る前に、ゴミ屋敷の状態を解消することは、単なる美観や整頓の問題ではなく、生存権を守るための緊急避難的な措置であると認識しなければなりません。周囲の家族や行政は、この「熱中症の密室」から住人を救い出すために、迅速かつ強力な支援を行う責任があるのです。命を脅かす灼熱のゴミ屋敷は、もはや個人の問題ではなく、公衆衛生上の緊急課題として捉え直すべき時期に来ています。